【2003年「ふたりのイーダ」福島県巡回公演旅日記】

■その壱 6月2日〜20日  
その弐へ
   

福島県の方々には毎年のようにお世話になっております。
昨年は「カモメに飛ぶことを教えた猫」、その前は「おにの捨六」。
そして今年は「ふたりのイーダ」。
この福島県巡回公演の期間は3〜4週間とけっこう長旅です。

大変なのにまたしても「かあさん」にレポートを頼んでしまいました。
よろしくお願いします。
それでは、はじまり、はじまり。


6月2日(月)
この日記を書くよう命じられた「かあさん」です!どうぞ宜しくお願い致します。
明日から、怒濤のような福島コースが始まります。
このコースは、財団法人福島県文化振興事業団・福島県文化センターと県内22市町村の教育委員 会の主催で21日間、18会場、28ステージの巡回公演です。
かなりのハードスケジュールで、前日の夕方に仕込をして次の日の朝に公演、バラシ(搬出)、そして 次の会場へ移動して仕込・・・と延々と続くのであります。
これだけ聞くと、「うわぁ〜大変!」と、思いますよね。確かに大変なんですが、ん〜十年前はほとんど の会場が体育館だったんです。んでもって、私が入団した当時に半分くらいが体育館。体育館の場 合、張り出し(舞台が狭い場合仮設して広げる事)や暗幕の設置などもするのです。会館の場合はこ れらの作業がないので時間的にも体力的にも助かります。ひどい時には仕込が夜中までかかり、次 の日の朝8時半には開演という時もありました。が、今や体育館は4箇所にまで減り、随分楽になっ たなあ〜と思うようになりました。
今回の「ふたりのイーダ」班で福島のコースが初めてなのは、「ゆう子」役の高木恵美子だけでありま す。「このコースを経験したらもう怖いものはない!」とみんなに励まされておりました。本人もこのスペ シャルコースを満喫すべく、はりきっております。
福島県文化センターの岩崎さん、笠原さんをはじめとした皆さん、そして課長の佐藤さん!これからお 世話になります!
福島で私達を待っている子ども達に「ふたりのイーダ」を観て貰うため、がんばります。
長旅なので体調に気を付けて行って参りま〜す。


6月3日(火)富岡町
いよいよ今日から福島コース開始です。
まずは東京から福島県富岡町への移動です。早朝の都内のラッシュをくぐり抜け、上野駅10時発のス ーパーひたち15号に乗り込み、いざ富岡町へ!
富岡町の会場は体育館。とはいっても町の体育館なので学校の体育館とは違い、ステージも広く照 明やバック幕を吊るバトンもあり、条件はほとんど会館といっしょ。それでもいろいろと時間がかかり、 6時間近く仕込にかかりました。
宿泊は合宿所なので、学生気分です!かあさんは仕込を終え、宿に戻るや否やワラビを発見!直樹 (片桐)と一緒にワラビ採りをしました。しかし、直樹は虫が苦手で、とっとと帰ってしまいました。その 後もかあさんは独り淋しく摘んでいましたが、収穫はわずか8本。キリンレモンであくを取りましたが、 なかなか上手く出来ず、みんなの口には入りませんでした。
明日は福島での初公演。子ども達に会える嬉しさと緊張感でいっぱいです。
明日からがんばるぞ〜!


6月4日(水)富岡町
今日の開演時間は9時半!
みなさん、朝早いとお思いでしょう!そうなんです、早いんです。でも、これが毎日のように続くので す。
役者はいつもより早く起きます。そして身体も起こすため、体育館の中を走り回ったり、体操したり、発 声練習をしたり、ぶつぶつ念仏のように台詞を言ったり、歌ったり(この芝居に歌はありませんので、 気まぐれに好きな歌を自己満足で歌います。だって、体育館て声が響くじゃないですか!気持ち良い です)とそれぞれ皆必死です。
そして客入れ。富岡町の小学校4〜6年生の子どもたち約400人が入ってきました。私達は子ども達の 声を舞台裏で聞き、気合が入ります。
子ども達は2時間10分(内、休憩15分)をしっかり鑑賞してくれました。主人公の直樹が小学校4年生 なので、気持ちが入るのでしょう。最後の方には「みんな直樹と一体化してしまってたのでは?」と錯 覚するぐらい真剣に観ていました。「かあさんは下品だ!」という直樹の台詞にもみんな納得している ようでした。
かあさん、ショーック!(な〜んてね)
さて、終演後バラシて矢吹町へ。移動はバスで2時間。そして仕込。「会館なのでらくちん!」と思いき や、照明の電源回路が少なく、思ったより時間がかかってしまいました。
宿に帰ると、なんと食事が食堂から部屋へ移されそうになっていたので焦りました。が、一寸の差で 間に合いました(ふ〜っ)。


6月5日(木)矢吹町
今日は10時開演。
いや〜、よく観てくれます。子ども達は大人が笑うような場面にもしっかり反応してくれてました。
一番感動したのは、りつ子姉さん(小野瑞穂)にホクロがあったとわかる場面(この芝居の最大の謎が 解けるシーン)で直樹が「もしかして、お姉さんが・・・?」と言う前に、『まさか!』と叫んでしまった生 徒さんがおりました(なんて勘が良いのでしょう)。その場面に出ていた役者はビクッとしてしまいまし たが、こういうのってうれしいんですよね。「ああ、観てくれている!」って実感する瞬間なんです。
さて、気を良くして矢吹町から次の現場三春へ移動!
三春は初めてです。ここの会館は今年の4月にオープンしたばかり。「ふたりのイーダ」がこけら落とし です。
とてもきれいな舞台(当たり前か)なのですが、釘打ちもガムテープもOKと言われ、「ごめんなさい」と 心の中でつぶやきながら真新しい舞台に釘を打ちこんでしまいました。会館の方はとても親切で仕込 が早く終わりました。
宿は会館の目の前。料理もおいしく大満足です。
明日の為にゆっくりお風呂に入り英気を養います。


6月9日(月)棚倉町
本日は2回公演。
観客は1年生〜6年生。すごい熱気です。特に1年生の「この芝居を楽しもう!」という思いがビシバシ 伝わってきました。食い入るように観ながら、直樹の台詞の一言一言に敏感に反応するのです。舞台 に蝶が現われると「蝶だ!蝶だ!」と喜び、椅子がひとりでに歩くとその不思議さに喧喧諤諤。直樹が ゆう子を探して舞台を走り回れば、「後ろにいるよー」と教えてくれる。・・・このまま「ふたりのイーダ」を 参加型の芝居と思いこんでしまうのでは・・・と思っていたら、ぎっちょんちょん!観るべきところはきち んと観ておりました。
ただ、前の方が少しうるさかったので、後ろの方に座っていた高学年がちゃんと観れたかちょっと心配 です。
とにかく1st目が無事に終わりました。お昼を食べて2st目に突入です。
今日のプチ出来事!じいじの動きについていけず、ゆう子が顔面にヒジテツをくらいました。このことを 教えてくれたとき、ゆう子は笑っていたので、恐らく大事には至らなかったのでしょう。
みんな〜、怪我のないよう気をつけましょう。


6月11日(月)長沼町
昨日は白河で2回公演した後、バラシて長沼町へ移動。そして体育館の仕込。
終わったのは、なんと夜の11時!(ふーっ、ふーっ。がんばりました。スペシャルデイでした)
ところでみなさん、「ゆびきりげんまん」したことありますよね。私の時代は「ゆびきりげんまん、嘘つい たら針千本飲ーむ」だったのですが、みなさんはどうでしたか?
「ふたりのイーダ」にも「ゆびきりげんまん」が出てくるのですが、ここでの台詞は「ゆびきりかんきり嘘 ついたら針千本飲〜む」なんです。福島の子ども達は自分たちのやり方を教えてくれようと、「かんきり じゃないよ」とか「飲〜む!じゃないよ」と反応しておりました。ふと、昔は約束したことを相手に守らせ るためじゃなく自分が守るために「ゆびきり」していたんだ!と考えてみたりしました。どう思います? 今日は富岡町での公演。福島コース初の中学生の観劇もありました。最後まできちんと観てくれまし た。うれしいです。
これから須賀川へ向かいまぁす。もちろん仕込です!


6月13日(金)
今日は宿紹介!
この福島コースで人気の宿は、須賀川の「ホテル米屋」。料理はもちろんおいしいですし、なんといっ ても良いのが、温泉があること!しかも露天風呂付き!ゆったりとお風呂に入り、カッーとBEERを飲 み、おいしい料理を食べ・・・さっきまでの疲れが嘘のように吹っ飛びます。平日だったのもあり、ほぼ 貸し切り状態。一同大満足!楽しかったです!
あっ、芝居も順調です。昨日はりつ子ねえさん、椅子から声が聞こえたと大感激(じいじの椅子と心が 通じ合ったと本人は言っております)。菊地さんマジックか?とうとう一体化に成功したようです。


6月14日(土)
今日はお休みの日です。みんなそれぞれにこの休みを満喫しておりました。
直樹とゆうこは照明の塚本さんと音響の栗原さんと一緒に、裏磐梯にある五色沼にハイキングに出か けました。アウトドアらしくソーセージを焼いたりマシュマロを焼いたりしてご満足!締めに温泉に入っ て来たそうです。
  <五色沼の青沼>
かあさんは近い所で会津若松、鶴ヶ城、武家屋敷をりつこねえさんと見て周り、歴史を振り返って参り ました。戌辰戦争を学びながら「戦争はいかん」と二人で芝居の台詞をはいておりました。
<鶴ヶ城>
明日は移動、仕込なのに私たちは少々飲み過ぎたようです。まっ、休みだからいいか!


6月16日(日)
南郷仕込。
今日は11時から仕込でした。本番がなかったのでゆっくり仕込ました。
その後、親子(かあさんと直樹とゆう子)水入らずで近くの温泉に行ってきました。露天風呂もあり、三 人で至福の時を過ごしました。
今日は父の日です。女性陣からじいじ(菊地さん)とおじいちゃん(関口さん)に感謝の気持ちを込め て、手ぬぐいを差し上げました。気に入ってくれると良いのですが。
さて、本日泊まっているのは山口屋さん。その前にある山には日本でもめずらしい青鷺が産卵のため 巣作りをしております。鳴き声は見た目よりかわいくないのですが、とてもめずらしいのでずっと眺めて おりました。まだまだ日本も捨てたもんじゃないです!


6月19日(木)会津若松市 パートT
今日の会場の風雅堂です
中に入ると垂幕が

期待を胸に、子ども達がやって来ました

満足げに帰って行く子ども達

元気なかあさんと風邪気味の直樹

バナナを食べるゆう子

見送って下さった会館の職員@

見送って下さった文化センターの職員A


6月19日(木)会津若松市 パートU
しばらく日記をさぼってしまいました。すみません。このコース最大のピーク南郷村・田島町の連続体 育館があったためエネルギーをそちらに集中させておりました。
<田島の体育館>
喜多方では終演後、ラーメンを食べに「はせ川」に行きました。おいしかったです!機会がありました ら是非行ってみて下さい。イーダ班のサインが飾ってあります(もうなかったりして・・・あっはは)。
本日、会津若松は風雅堂という立派な会館に来ております。例えば宝塚の地方公演もOKなくらいの 広さがあり、「イーダ」の舞台が二つは充分立つ位なんです。だから袖が広い広い!舞台から退場し て次に登場する場所まで一所懸命走るのですが間に合わないくらいでした。皆、ヒーヒー言っており ました。
さて、裏方を紹介します。冨田章二君と鈴村志門君です。このお芝居では裏方も重要な役を務めてお ります。歩く椅子と不思議な蝶!「ふたりのイーダ」の重要なポイントをこの二人が本当によくやってく れました。この後「青い図書カード」の公演があるので章二とは今日でさよならです。ありがとう!章 二!イーダ班全員心から感謝!明日は川越のおやこ劇場さんです。明日は一人になって大変だけど よろしくね、志門!そしてありがとう!22日からは大御所前田さんと木立君が来てくれます。
明日は川越で公演なので一度東京に帰ります。



鈴村志門(左)と冨田章二(右)


6月20日(金)川越≪福島日記番外編≫
今日は川越おやこ劇場さん主催の公演です。久しぶりに子どもから大人まで幅広い層のお客様に観 ていただきました。しかも会員さん以外の一般のお客様もいらしたようですが・・・。この機会に入会し て下さると私たちもうれしいですが・・・どうだったのでしょうか?
川越の会場の大きさはちょうど良く、とてもやりやすかったです。しかも夜公演!役者は大助かりでし た(朝だと身体を起こすのに一苦労なんです)。
私事ではありますが、うれしい反応をして下さった方がいらしゃいました。恐らく年配の男性の方だと 思いますが、私の台詞で「この家族は〜」という含みの笑いをしてくれたんです。うれしかったです。と 書いても皆さんにはよく解りませんよね。観ていない方は是非観て下さい。そしたらわかりますよ!
まっ、久々に大人の方の反応も受けることができ、良い舞台になったのではないかと思います。最近 は小学生対象の公演が続いていたので、知らず知らずのうちに演技によけいな贅肉のようなものがつ いていたようです。こびた芝居をしていた訳ではないのですが、大袈裟とでもいうのでしょうか、そんな 表現は必要ないだろ、というものがいつのまにかついていたりするんです。不思議な事に!今回はそ れを見直すことができ、私たちにとって幸せなことでした。
バラシは時間がなくて大変でした。21時30分に退館しなければならなかったので、バラシ時間はわず か40分。しかもリフト搬出入!普通条件でさえ一時間弱なのに、えらいこっちゃ!劇場さんからお手伝 いの方が沢山来て下さったのでとても助かりました。それでも会館の外に荷物(大道具・小道具など) を出し終えたのは退館の三分前!後は地道にトラックに積んでいきました。「あれ?着替えは?」ってお思 いでしょ!もちろん気持ち良くお外でぱーっとやりました!あっ、言っときますが人の迷惑になるような 事はしてませんのでご安心を。
気持ちの良い汗をかいた後は劇場さんからいただいたBEERで喉を潤し家路に着きました。